はじめに
水滴が落ちる音,頬にできた真っ赤なにきび,取り残された空き家。
「ぽつん」という擬音語で表されるそれらは,周囲に馴染みきれない独自の存在感を放ち,私たちの目を惹きつける。
そうした存在が持つ,寄る辺の無い雰囲気に思いを馳せ,私たちは何を感じるだろう。
身近な寂寥感に共鳴するのか,孤高さに憧れを抱くのか,はたまた愛らしさを感じるのか。
「鈴木大拙館 (石川県金沢市)」
今回は「ぽつん」をテーマとした写真やイラストを集め,一種の展覧会のように公開する。
「ぽつん」とした存在が持つ"孤"の物語を考えていきたい。
第1部 仲間外れの「ぽつん」
それは,私たちが見た通り孤独な存在なのだろうか。
しかしその印象は,あくまで切り取った一場面から起因するにすぎないのかもしれない。
もしかすると,1人別の次元のストーリーラインに身を置き,
他とは違った視点で周囲を愉快に見渡しているのかもしれない。
「公道の花鉢」
ただ一つ公道に置かれた鉢。
向こう側の花鉢の一つだったと推測されるが,何の拍子で公道に飛び出したのか。
中央の段差が,属していた集団と1つ佇む孤の隔たりをより強調する。
そしてまた,青い鉢が直立しているところに堂々とした風格を感じさせる。
「ゴマごましている」
黒ごまの外側の薄皮をむけば,白ごまになるチャンス。
「雪原フラミンゴ」(作:タツノオトシゴ@Re:All)
第2部 問いかける「ぽつん」
何でこいつはここにいるのだろう。どうしてここにいるのだろう。
「カベ」
大学構内の壁に書かれていた落書き「カベ」
「田山花袋 1/22」
大学にあった落書きその2。
何故あんな片隅に書かれているのか。
いつからあるのか。
誰も気づかないのか。
気づいてて消さないのか。
謎は尽きない。
「立」
「モチ」
とっくにお正月は過ぎてるけれど。あるだけ,めでたい。
「〇」
ホームドアの先に見えるのは,「まる」の紙パック。
わざわざ投げ込まないと,あそこには落ちないだろう。
第3部 「ぽつん」と猫
道端にいる野良猫たち。群れることなく,野生を生きる彼らに視線を向ける。
そこには愛らしさだけでなく,「孤」で生きる力強さも垣間見えるのではないか。
「猫(岩)」
「猫(落花)」
「猫(光線)」
「猫(柵)」
「猫(塀)」
第4部 脳トレ「ぽつん」
隠れた異物を見つけることを目的に作られているがために,
今回の「ぽつん」は初期状態において周囲と同化し,身を潜めている。
しかしその答えが分かった瞬間,絵の中の異物は「ぽつん」たる存在感を発揮する。
もうそれしか見えなくなる。
「り」
りりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりリりり
おわりに
「ぽつん」という擬音語は,ただ孤独な存在を表現するだけでない。
特異かつ独自の存在感から人の目を惹きつけ,その存在の「これまで」を考えるきっかけとなる言葉であると考える。
身近に存在する「ぽつん」に今一度,目を向けてみてはどうか。
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